闘う解剖学者の『パンダの死体はよみがえる』
【本・マンガ】
私が東京で最も好きな場所は上野の国立科学博物館です。学生時代は友の会に入会していてほとんど毎週のように通っていた時期も。
ちょっといいなと思っていた男子を無理矢理誘ってでかけたこともあります。かなり舞い上がってしまって、閉館時間まで博物館中ひっぱりまわし、しゃべりつづけました。案の定フラれました(後に彼が友人に「あいつすごい変人」と語っていたことが判明)。
悲しいことがあると「みどり館」へ行きました。あまり人気がないのかいつ行ってもひっそりしていました。みどり館には何百という動物の剥製や骨格標本が展示してありました。忠犬ハチ公や南極犬ジロ、ニホンオオカミ、ジャイアントパンダ……。物言わぬ動物たちの剥製を目の前にしているとなぜだかすーっと心が穏やかになったものです。
国立科学博物館で活躍されたのが、遠藤秀紀教授。パンダがものをつかむメカニズムを解明し世界的に注目された解剖学者です。『パンダの死体はよみがえる』はパンダの解剖による発見の経緯も書かれています。
これまでパンダは第6の指(橈側種子骨・とうそくしゅしこつ)があると言われていたのですが、それだけでなく第7の指(副手根骨・ふくしゅこんこつ)もあると発見したのです。パンダは7本の指で笹をつかんでいるんですね。ご存じでしたか?
遠藤教授は、インディ・ジョーンズとブラックジャックを足して2で割ったような学者です。ゾウやクジラ、ネズミやコウモリまでありとあらゆる動物の遺体を求めて世界各国をかけめぐります。5トンもあるゾウの解体は体力勝負。メスを片手に血や匂いをものともせず挑むのです。
研究室に閉じこもっている学者とは対極にあるような、闘う解剖学者なんですよ。カッコイイ!
学者の書いた本はどうも難しそうで……と敬遠される方もいるでしょう。確かに専門用語はバンバン飛び出すし難しいかもしれません。
でも研究に命を賭けている研究者の文章には「熱」があるのです。おざなりに書かれたものか、心血を注いで書かれたものかは素人である私だって分かります。日本のアカデミズムに対する怒り、研究への情熱、知に対する使命感。遠藤教授の熱気にあてられて、読んでいる私も力が入ります。そうよ、先生! その通り! 頑張れー!
私の愛したみどり館は2003年に閉館されました。でも悲しむことはないのです。翌年に新館がオープンしたのだから。遠藤教授が精力を注いだ「大地を駆ける生命」は115体の剥製が集められた画期的な展示です。あ、私? もう懲りたので一人で行きますよ。ぐすん。

パンダの死体はよみがえる
遠藤秀紀
■パンダのフェイフェイを解剖したときの写真や、ゾウの内臓など写真がちょっとグロかもしれない。でも意外な学問の裏側をかいま見られる貴重な本。(麻理)
今日のサイト
思い入れのある場所。サイトを見てるだけでも熱いものがこみ上げてくる。人間の干し首や、母親・赤ちゃんのミイラもあって、私は興味深かったのだがデートに行くべきではなかった。ちなみにパンダのしっぽは「白」。
2005年 4月 17日(日)
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