世界を股にかける語学超人・梅棹忠夫

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 昨日のコラムでは、独学で16カ国語をマスターした通訳者・ロンブ・カトーについて書きました。彼女は言うなればインドア派の外国語習得者(リングイスト)。今日ご紹介する語学超人は、根っからのアウトドア派・梅棹忠夫(うめさお ただお)氏です。

 梅棹忠夫氏は言語学者ではなく民俗学者です。1920年京都市生まれ。現在国立民族学博物館顧問及び名誉教授。京都大学名誉教授でもあります。この経歴を見ると「偉い学者さん」的イメージですが、大学にいるより海外にいる方が長いと言っても良い、フィールドワーク系の学者です。

 学者になって50年、世界各国を駆けめぐり研究のために様々な言語を学習。朝鮮語、チベット語、モンゴル語、ペルシャ語、フランス語、スペイン語、ポルトガル語、イタリア語、ドイツ語、英語、スワヒリ語、ロシア語、タイ語、ビルマ語、ダトーガ語、ギリヤーク語、ラテン語、エスペラント語(多すぎるので以下略)……。ちょ、ちょっと先生、いったい何カ国語話せるんですか!

 エッセイ『実戦・世界言語紀行』によると彼の学習法は、ひたすら「現地実習・体験学習」。もちろん会話書などの語学テキストも手に入れて勉強するのですが、現在のように語学教材が溢れている訳でもないし、話者人口の少ない小言語はテキストすらありません。

 梅棹先生は探求心が沸いたら現地へ飛び、そこで暮らす人々にとけ込んでカタコトから日常会話、高度なコミュニケーションへとたちまち上達してゆくのです。なるほどタイトルに「実戦」と書かれているだけあって、体当たり的な学習法です。

 それにしてもなんというカッコイイ民俗学者なんでしょう! カラフトではイヌぞりで大雪原を疾走し、ミクロネシア諸島のポナペ島では島民と歌を歌って酒盛りし、スペイン人神父とラテン語で語り合い、アラブのベドウィン族とリビア砂漠を歩き、モンゴルの草原で美しい少女に恋をする……。

 冒険、また冒険の人生。しびれます。私は女ですが、男のロマンってのはこういうのを言うんだなあ。言葉が話せるってなんてすごいことなんだろう。

 この先生、インドネシア研究をするためにはオランダ語をまず学ばねば(インドネシアはずっとオランダ領だった)と、インドネシア語のついでにオランダ語も独習してしまったり、フランス語を耳から覚えてしまうような語学の天才ですから、普通の語学学習者がハウツーとして読むのは適していません。

 でも英語や中国語などの大言語だけでなく、少数民族の話す小言語も熱心に学ぶ姿勢からは、梅棹先生の言語に対する深い愛情が伝わってきます。世界は狭くなったと言いますが、まだまだ世界は果てしなく広がっているのだと思いました。


実戦・世界言語紀行
梅棹忠夫
■民俗学だけでなく、生態学、文明論、情報論など幅広い学問に精通した天才。この名著が絶版? 冗談はよしてほしい。図書館へGO!

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 梅棹先生のように日本各地を旅する新庄クン(のリアルマネキン)。現地の人にとけ込んでます。

2005年 5月 27日(金)

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